心を癒す、解放するお絵かき

物心ついた時から絵を描くことが大好きで、近所の「お絵かき教室」に通っていました。先生は私の結婚式にもご出席くださった恩師です。幼少期から多感な12歳頃までいつも静かに見守ってくれていました。これと言って何か教わった記憶があるかと言ったらほとんど・・・ない。(失礼!)おそらく画用紙のこと、絵の具のこと、基本的なツールについては教えてくれたと思いますが、残っている記憶は「自由にどうぞ」の雰囲気と先生の笑顔。5年生からは油彩も始めましたが、それもまた事細かに描き方などのテクニックを教わった記憶はなし。

もちろん、私の記憶力が悪いだけかもしれないけれど、「自由に絵を描けばいい」「好きなように表現すればいい」という意識を植えつけてくれたのは先生です。そんな先生との会話でひとつだけ覚えていることがあります。

私の育った地域ではドッチボールが盛んでした。1年生から各地域のチームに入り、グラウンドに内野、外野を区別する線を引き、チームに分かれ試合をする本格的なドッチボール。市の大会もあり、ユニフォームに背番号、ハチマキもして何回戦も勝ちぬき、優勝した年もありました。そんなチームの練習に週2〜3回参加していたのですが、それが小学校高学年になってくるとイヤでイヤで。どうやってサボるかということばかり考えていました。

ある日、おそらく友達も止めようとしてくれていたのに、押し切って辞めてしまいました。そんな時期でも、お絵かき教室だけは通っていました。先生は相変わらず何も言わずに見守ってくれていました。そして数ヶ月後(かな?)何となく、後ろめたい気持ちややっぱりドッチボールが好きな気持ち、続けている皆が羨ましい気持ちなど色々な気持ちに押しつぶされそうになり、また再開したのです。そして先生が、絵を描いていた私に言いました。

「セイコちゃんらしさ、戻ってきたね」

なぜか子どもながらも涙をこらえるのがやっとだったのを覚えています。今思えば、思春期のはじまり。ムシャクシャした気持ちをどうすることもできず、絵を描くことは私の中で自然とストレス発散になっていたこと、そしてそんな心の中がはっきりと絵に現れるんだ、ということを知りました。

生活はバランス。モヤモヤした気持ちでいると、それが体の不調に現れたりします。仕事が忙しすぎると家庭をかえりみなかったり。余裕がないと子どもにあたってしまったり。

バランスのとり方は人それぞれ。日常での気持ちの浮き沈みを、私は「絵を描くこと」でバランスをとっているのでした。それを知っていたはずなのに、仕事に没頭し絵画やキルトの制作活動を「いつか」と置き去りにしてきた30代。バランスを崩した生活は自分を苦しめるだけでした。

今、年齢を重ねたこと(経験を積み上げたこと)で見えてくるものがたくさんあります。(すみません、先輩。まだまだ若造です!)今まで誰かが私を支えてくれたように、私が誰かにしてあげられることはないか??と考え始めました。

「いつかあの時の先生のようにお絵かき教室をひらきたい」という漠然とした想いは若い頃からあり、美術科教員免許も取りましたが、何となく「これだ!」という気持ちを押し上げるような強いインスピレーションがなく、同じアート系でも少し違った分野(生地屋さん、キルト教室)に入りこみました。

娘の思春期、息子のイヤイヤ期、自分は更年期に差し掛かり、助けて神様仏様。という状況でハッと気づきました。親子の葛藤、子どものストレス、こんな時代のために今までの私があったんだ。

アートセラピー。この言葉の響きは娘にとっての「マカロン」みたいなもの。笑
私自身が癒されてきた、体験してきた、絵を描くことで心の葛藤を和らげられること。ほんの半径数メートルにいる、悩んでいる友達やその子どもたちの心を癒すことができるなら。ということで勉強開始。チャイルドアートセラピストの資格をとり、早速息子の幼稚園にオファー。

2019年7月に幼稚園のアフタースクールとして、プライベートのアートセッションを始めました。アートセラピーとは、陶芸療法や音楽療法、文芸やダンスなどの分野も含みます。絵画療法はそのほんの一分野ですが、そこに焦点を当てて活動しています。もちろんまだまだ勉強中です。これからもたくさん学びたい、経験したい、と思えることが見つかったこと。それがこの年になってまだまだ本気を出して挑戦できる環境で暮らしているということ。
私は幸せものです。

アートセラピー(絵画療法 ; 芸術療法 ; 創造力治療、英語: Art therapy)は、認証された治療者が作品と表現式を通してクライアントの象徴的か表向きの自己表現を読み取り、クライアントから解釈を引き出す心理療法の一種である。アートセラピーは芸術と心理療法という二つの起源があるために、その定義は多様である。”アートをセラピーとして”芸術の創作活動自体を癒しとして扱う、または、セラピストとアートを創作するクライアントとの間の心理療法的な移転のプロセス、その両方と位置づけることができる。

ウィキペディア アートセラピー

絵を上手に描くテクニックは、例えば美大・芸大に入りたいなどの目的(デッサンの試験のため)を持った人ならその時に訓練すればいいと思います。私も高校3年生の夏休みは一日8時間デッサンの予備校に通い、勉強もせずに(笑)石膏デッサンばかりしていました。でもここでは、絵を上手に描く方法を学ぶ教室ではなく、日常の中で心を解放できる機会を増やすためのセッションを目指しています。子どもはとくに、今しか見えないもの、今しか表現できないものがたくさんあります。

自分自身が今まさに子育て真っ最中の日々であること。これは親の気持ちや子どもの目線を常に意識できる絶好のチャンスだとプラスに考え、活動をはじめました。今、1年が経ちましたが、子どもたちの成長を見るのがこんなに楽しいなんて。いつでも「好きなように描いていいよ」「決まりなんてないよ。自由でいいよ。」「今大好きな色を使っていいよ」「どんな使い方、どんな描き方でもいいよ」と言い聞かせてきた子どもたちが、のびのびとクレヨンで線を引く姿を見て、35年前の先生の心の中をほんの少し垣間見れたようで、嬉しいです。

絵と色と心をつないで育てる 
子どもお絵かき教室 なにいろの木