「日本の美しいことばと配色」

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この本を手にした時、もうゾクゾクと背筋が凍る・・・は意味がちがうな。背筋がなんだろう、温まる?とにかく、嬉しい、気持ちがいい、誇らしい。こんな感覚をもちました。日本にはこんなに美しい言葉があって、歴史の上で磨き上げられてきた色彩感覚があって、と自分はなにもしていないのに勝手に誇らしく感じてしまう一冊。

和の配色決定版
「日本の美しいことばと配色」和風カラーチャート
南雲 治嘉 著 Japan traditional color chart
をご紹介します。

大好きな水彩のぼかしで描かれた可愛らしくカラフルな表紙はもちろん、タイトルに含まれた「色」と「ことば」。まるでちょっと自分にご褒美的な「コーヒー」と「バームクーヘン」の組み合わせのよう。もうどんな内容なのか、ワクワクが止まらない。

「納戸色(なんどいろ)」や「瓶覗(かめのぞき)」、「浅葱色(あさぎいろ)」など日本の色の名前を説明した本はよく見かけますが、日本の「ことば」から連想される「色」が詳しく説明されていてとても新鮮でした。表玄関から入ってくるはずの来客が、いきなりお勝手口から入ってきた!みたいな感じでしょうか。そんな説明はいらない?とにかく中身をみると、知らないコトバがたくさん。ああ、日本語って難しい。

配色を見るのはもちろん楽しいのですが、各ページに掲載されている写真を見るのも楽しいです。




例えば豪華の分類に入る「こうばし」(香ばし)というコトバと配色。写真はコーヒー豆。もうこれを見ただけでコーヒーの香ばしい香りがしてきて、ちょっと休憩がしたくなります。

現代の香ばしいは、焼いたり煎ったりして漂う香りですが、かつては「かぐわし」と言って良い香りのことを指し、香水のような香りでした。きものにそれを染み込ませたり、香りは雅びの生活には欠かせないものです。

この言葉のもう一つの意味は、心が引かれる状態、あるいは名誉なこと、という時にも使われてきました。暗清色が中心のコントラストのある配色です。

日本の美しいことばと配色

暗清色(あんせいしょく)shade color
純色にブラック(黒色)のみを加えてできる澄んだ調子の暗い色のこと。
(純色=赤・黄・青などの色味の中でも最も鮮やかで白や黒を含んでいない色。真っ赤、真っ黄色など。)

コントラスト
色の場合、隣にある色との対比。明度の差や色味の差などが大きい場合に使われます。

ページには、オレンジ色やベージュ、ブラウン系の落ち着いた色が並び、まさに香ばしい印象。2色の配色と3色の配色に加え、文字の配色(4・5色)の紹介されていますので、作品づくりに活かせるのはもちろん、見ているだけでもセンスが磨けそう(錯覚?)です。

今ちょうど作っているTea Timeという作品は、まさにこの色の組み合わせ。

配色の勉強にとても有益な本ですが、日本語を知るという意味でもとても参考になります。ちらっと開いただけでも知らない日本語ばかり。例えば・・・

・てなる
・もやう
・なまめかし
・かりそめの
・かすみたつ
・たまゆらな

・・・聞いたことありそうで、ないような、やっぱりあるかも・・・ぐらいの難しく美しい日本のことばたち。この中で、「てなる」は「→手慣る」と書くらしいです。「茶系を中心にグレイッシュな色による配色」ということでとにかくカッコイイ。茶系からダークブルー系の落ち着きのある配色が多めのようです。上の「こうばし」や「てなる」。今私はこんな風に、カッコイイ雰囲気や落ち着き、癒しのイメージの色を求めているんだな。

てなる(手慣る)「熟練」ゾーンに分類
「手」は日本文化の中でも重要な意味を持つことばです。それは、人類の歴史の中で手が果たしてきた役割があまりにも大きかったことを示しています。
技術は手から生まれ、文化の発展を支えました。手習い、手の裏、手立て、手ずから、などその用例は多い。手慣るは使い慣れる、すなわち熟練することを意味しています。茶系を中心にグレイッシュな色による配色です。

日本の美しいことばと配色

色とことばが自分の心にスーッと入り込み、とても心地良い感覚。
皆さんもぜひ好みのことばと配色を探してみてください。
さ、コーヒー飲もう。